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最後の舞台は、自分自身を演じることで終わる。

ついに、明日千秋楽。
と書いていたら、日付が変わって、今日千秋楽になってしまいました。

薄平広樹です。


US-PRODUCEを発足しようと思ったのは、明治大学文化プロジェクトというシェイクスピアを上演する団体に参加したときのことでした。

袖にいるときに、金原並央さんと一緒に話してるときです。
この公演終わったらどうする?みたいな話をしてるときに
金原さん役者やんないの?という話になりました。
そのときに、「役者やりたい!!」的なことを言って
僕自身も何も予定がなかったから、舞台をやろうと決めて
そんでもって、MSP「十二夜」のメンバーに声をかけようと決めて
更に演劇学専攻に声をかけたら、演劇やりたいっていう初心者が沢山あつまって

自然と、一つの団体になりました。


多数のスタッフの方々に恵まれ、三ヶ月間の稽古とワークショップを重ねて
#1「LOVE30」を上演します。
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いくつものパターンの演出。トリプルキャスト。
演劇初心者を舞台に上げたのは、癖がないからでした。ホリプロのドラマ女優さんから、マネージャーだった人から、スポーツマン、合唱やってたやつ、様々な人が、初めて舞台に立つ。
その新鮮さが好きで、その吸収の早さがたまらなくて、僕も刺激をもらいながら舞台を作りました。
ちょっとダサいみためなんだけど物凄くかっこいい男子と、かわいいんだけどちょっぴり情けない女子を描くのが好きで、それが今でもカラーとなっていると思います。

最初の公演は非常に好評でしたが、お客様からもらうアンケートには役者の演技や照明・音響のダメだしばっかり。僕は、物語や演劇について考えるのではなくて、なにか技術ばっかり指摘されることにウンザリしてしまったのでした。
そして、#2「テルコ組曲」では、僕の勝手で、物語を扱わず、テーマだけ扱い、演劇を押し付けたり解体することに取り組みます。
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#2「テルコ組曲」では、役者には酷なことを要求しました。そして、色々不安があったと思います。脚本があっちへいき、こっちへいき、身体表現が移り変わって、コミュニケーションの実験を重ねました。そして#1の雰囲気を期待した観客を蹴散らす作品を作りました。

アンケートは酷評と絶賛、二分しました。
おおざっぱに言うと「興奮した・涙しました」or「わからない・難しい」のふたつ。
ただ、技術に関してのダメだしアンケートは一切なくなり、その代わり作品の解釈や物語性について書いてくれたアンケートが増えていきました。US-PRODUCEは、観客に物語を託す作品を作り始めます。その代表が、テルコ。今でも、「テルコ組曲」は、心に渦巻く作品であります。

そして、とある転機が訪れます。
#3上演を心に決めた時です。

US-PRODUCEのメンバーは全員が演劇の道に進むわけではないのです。
就職したり、教員になったり、または別の道を選んだり、そもそも劇団ではなかったので、これまで出演してくれたメンバー全員が出演できる確証がありませんでした。
そこで、MSP「夏の夜の夢」に参加して、素敵な後輩たちと出会います。
安部麻里奈、岩井由紀子、岡本摩湖、栗又萌の四人です。
US-PRODUCEにあまり演劇経験のないフレッシュな存在としてスカウトした後輩は、今までにないエネルギーをもった人達でした。演技が上手い下手という問題ではなく、彼女達の「存在」は物凄く輝いているものでした。彼女達の「存在」を上手く引き出した舞台をつくれないかと、僕は試行錯誤します。

そこで、あるスタイルが確立しました。
それは「1分間フリーに話してもらうところから、演劇をつくる」というスタイルです。
適当に喋ってもらった内容から、身体の癖、目線、呼吸、関係、トーン、言葉の音をつけていく。
そうして、何気ない会話でありながら、演劇にみえてしまうという作劇方法を手に入れました。
すると、僕が台本を作らなくても、構成があれば役者は自ら生きてくる。
そして、そこに僕が演出をつける。
この活動を繰り返し繰り返し、最終的には60分の作品をつくることにしたのです。
こうして完成した作品は、何気ない日常の奇跡を描いたような作品となりました。

#3「LOVE SO-NG/就活生になろう!」は、就職活動をテーマにした作品です。
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就職活動を始めたUS-PRODUCEメンバーを出演させ、リアルな就職活動の演劇をつくる。
それが#3のテーマでした。
出演者のスケジュールの都合上、あまり稽古日数を取らない稽古を組まざるを得なくなり、あまり稽古をする必要のない、即興性のある舞台を創作することになります。
ですが、ここに大打撃。
東日本大震災が起こります。演劇界にもその影響が及びました。
US-PRODUCEも、さらに稽古日数が減り、#3上演も危ぶまれました。
大学側が、施設貸し出しやサークル活動を禁止したのです。

ギリギリまで上演が決まらずに創作活動を続ける日々。
やっとのことで劇場が確保できた日は、ちょっと泣きそうになりました。

しかし、作品が完成していませんでした。
本番上演することが決まっても、作品はまだ定まらず。
最後のシーンは、小屋入り三日前に決まるという。
楽しみながらも苦しんだ三月、四月。「面接演劇」「就職活動演劇」という新しいスタイルの演劇を確立します。
#3のメンバーでなければ作れない作品が出来ました。

役者にはまたテルコのときのように迷惑を沢山かけるなーと思いながら稽古に取り組んでいました。
実際、そうだったと思いますが、僕のみる限り、僕の演出スタイルが変わってから、役者は舞台を「楽しむ」ようになりました。
演技に入り込むのではなく、舞台を楽しむ。演劇を楽しむ。演じることを楽しむ。
楽しんでいる姿は、僕が窮屈な演出をつけるのよりも、何倍も輝いてみえたのです。

#3は、#2のような批判は少なく、アンケートは全て、作品の解釈や感想、扱っている「就職活動」というテーマについて、観客の皆様が感じてくれたことが記されていました。
そして「泣いた」という感想が大半を占めました。
決して泣く作品ではないと思って作りましたが、US-PRの良さが表れた作品だったと思います。
US-PRODUCEでは、観に来てくださった大半のお客様が、作品について感じたことを、言葉に表現して記してくれるようになります。

僕は、役者で肝心なのは技術ではなく、「存在」だと思っています。
その「存在」を生かした作品を生むことが出来たこと、僕にとって、発見であり進歩でした。

なにより、US-PRODUCEという団体名にあってると思ったのでした。

役者が、役を演じるのではなくて、自分を演じること。
役者のもっているコンプレックスを、舞台上に引き出すと、途端に輝く。
そして、存在感が増す。
自分を魅せていくこと。存在を引き出すこと。



今回#4「メトロ!/Al-ways~走れ大学生~」は、まさに、その集大成です。
安部、岩井、岡本に引き続き
菅野友美、森弓夏、永平こだま、岩倉頌磨、櫻井亜衣というメンバーを迎えて鍛え上げました。
ある種、挑戦の舞台です。
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US-PRODUCEのメンバーも、自分の言葉で語ることに苦戦しながら、自らを演じることに、向き合ってくれています。
最後の舞台は、自分自身を演じることで終わる。

それが、またいいなと思っています。


一体何を書いているのかよくわかりませんが、とにかく千秋楽。
ここに書ききれない多くのスタッフさん、スペシャルサンクス、観客の皆様に支えられています。

本当にありがとうございます。

最後のUS-PRODUCE、是非観に来て下さい。

by us-produce | 2012-02-12 02:10 | 稽古場日誌